粒沢らぼ。

当ブログでは現役生命科学系の研究者が、気になった論文を紹介したり、考えていることを共有したりしています。可能な限り意識を”低く”がモットー。たまに経済ネタとかも。
書いてる人:粒沢ツナ彦。本業は某バイオベンチャーで研究者をやっています。本名ではないです。
博士号(生命科学系)。時々演劇の脚本家、コント作家、YouTube動画編集者。アンチ竹中エバンジェリスト、ニワカ竹中ヘイゾロジスト。
Twitterアカウント:@TsubusawaBio←お仕事などの依頼もお気軽にこちらへ。

タグ:PCR検査

スクリーンショット 2023-05-22 8.38.51


船越英一郎の変なドラマが始まったと思ったら美容整形外科のにしたんクリニックの宣伝だった。

電車の広告でもやたらと見かけるし、にしたんクリニック、めちゃくちゃ広告にお金かけてるよね。




噂によると、にしたんと木下グループは新型コロナのPCR検査で10桁億円くらいもうけたらしい。

知人の医者が「オレもPCR検査ビジネスは思いついていたのに実行しなかったの、本当に失敗だった」と悔しがっていた。

コロナ初期にその人とは少しそういう話をしていたからね。


そもそも個人的にはコロナ初期から個人的にはPCR検査を毎回やるというオペレーションには、どちらかというと反対だった。

PCR検査ってそんな簡単じゃないでしょ、みたいなブログ書いたらインフルエンサーに紹介されたらしく、一時期ビュー数も当ブログにしてはそこそこ伸びた。


毎回PCRやってたら、お金も労力かかりすぎる上にそれで感染が抑えられるわけでもないし、政策として費用対効果が悪すぎるでしょ。

そんなことよりも、さっさと感染が拡大してみんな感染して誰も気にしなくなれば終わる話だということは、最初からわかっていた。

だから、ケチで有名なこの国の政府(とりわけ財務省)は、毎回PCR検査するなんて方法は選択しないだろうと読んでいた。


ところがどっこい。


いつのまにか、政府がカネを出して、感染疑い者にはPCR検査を実施するという方向に進んでいったね。

結果的に意味があったかというと、粒沢はお金を浪費した以上の意味はほとんどなかったと思う。

単ににしたんとかのPCR検査ビジネスに事実上のお墨付きを与える格好になり、儲けさせただけで終わった感が強い。

PCR検査をしようがどうしようが、結局コロナはみんなが感染することで終わるしかなかった。

もしかすると、PCR検査の胴元から議員などにロビー活動や献金があったのかもしれない、とも思う。


というのは、商売人としては単なる負け惜しみである。

今から思えば、コロナの初期からPCR検査やります!といえばめちゃくちゃ儲かったんだよな。

政府の動きがそういう方向に行くとは、理詰めで考えているかぎり全く思えなかったが。

悔しいが、読み負けたといえばその通りだ。

世の中、理屈だけで動いているわけではないという証左であるかもしれない。

コロナの死亡率が高いらしい、という恐怖が煽られた結果、そこをうまいこと埋めるパズルのピースとして一時的にでも機能したのは、PCR検査であった。

それは否定しようがない。


読みで勝ったのか、たまたま選んだ道が正解だったのか、政治献金で無理やり世の中を動かしたのか。

どれであろうと、勝者は勝者であり、外野が何を言おうと負け惜しみにしかならないのだ。

おめでとう、木下グループ。おめでとう、にしたんクリニック。


コロナ初期から、ビジネスチャンスになりうると思って本気で動いたからこそ、鉱脈に気付けたのかもしれないね。

チャンスは皆にあったが、行動した者にしか栄誉や富は訪れないのだ。



23140257


実家の母親が風邪を引いたらしく、新型コロナの抗原検査キットを買って自分でテストしたら、陰性だったらしいんだけど。

 「抗原検査は信頼性が低いらしい!抗原検査で陰性だなんて言われても信頼できない!医療機関で正規のPCR検査で陰性を証明しないと!」と息巻いていた。

じゃあ何で抗原検査したのか…と理解に苦しむが、一般の人の理解はいまだにPCR検査最強とか、そんな感じだよね。
抗原検査は信用できない!という断片的情報だけが頭に残っているパターンだな。
ちゃんとした抗原検査を作っているところにとってはとばっちりで、風評被害に近いような気もする。

濃厚接触でないのに医療機関で検査を受けるのは、検査余力を圧迫するから推奨されなかったはずだけどな。

何でそこまで陰性にこだわるのかと聞くと、新型コロナにかかったことで周りの人に迷惑をかけてはいけないと思っているらしい。
うつしてしまうと、出勤停止とかになるから迷惑になるんだと。
少なくとも抗原検査で陰性だったし 、それで十分じゃないかと思うんだけどね。
でも抗原検査は間違えることがあるから、と聞く耳を持たないようだった。
そんなこと言い出したらPCR検査だって”絶対”はありえないんだけどなあ。

もしかして、自分でやる検査というのは信頼性がひくいと感じられるバイアスがある、のかな。
専門家の人に何だかわからないけど検査してもらうことの安心感みたいなものは確かにあるのかもしれない。 

でも、「その安心料のためだけに、数万円の検査費用を払うつもりなのか?」(流石に風邪症状で「不安だから」、では無料にならないはず)
と聞いたら、「ちょっと考える」と言っていた。
ちゃんとしたところは、検査費用だって安くないしね。

まあ、発熱外来に電話相談したら適切な対処を教えてくれるんじゃないかな。
最近は医療逼迫とか、どうなってるのか知らないけどね。

何でもかんでも公費で無料にすると、「安心のため」で必要性の薄い検査や診察を受ける人が頻出しまくるんだろうね。
新型コロナの治療費は現在は公費負担だけど、それもさっさと通常の風邪と同じ扱いにすべきなんじゃないの?とかも思いましたね。 

1940736
昨日は、新型コロナのウィルスは上位
2%の感染者で社会のウィルス量全体の90%を占めるという論文の話でした。

だから、そういうウィルスの多い人を検査で見つけて優先的に対処すれば効率がいい可能性がある、という論調であった。

 

ただまあ、ツッコミどころがないわけではない。

 

まずこの検査方法でどれだけ正確にウィルスの量が測れているのかという問題がある。

PCR検査の結果は、検体の唾液の状態は人によっても異なるし、食べ物の残渣などの不純物で増幅効率が悪化するなどの影響を受けてしまう恐れがある。

しかも、PCR検査においてウィルス量の判定基準であるCt値、つまり増幅が起きるまでの温度サイクルの数は、増幅サイクル1ズレるとウィルスの推定値としては2倍ずれるという性質がある。

今回、人によって唾液に含まれるウィルスの数の個人差が大きいことが示唆されたわけだ。

それ自体はおそらく正しい。

だが、サンプル一つ一つの測定の誤差の議論がないので、個別の測定で「この人はウィルスが多い」とか「この人は少ない」といった情報が信頼できるかどうかは別の話だ。

 

また、ウィルス量が多い人、中でも無症状の人が他の人へ感染を広げやすいかどうかは決着がついていない

普通に考えて、咳やくしゃみなどの症状が重い人は、それだけウィルスを広げやすいと言えるだろう。

無症状の人は、それに比べれば感染はさせにくいという予想も成り立つ。

もちろん、真の意味でウィルス量との相関が全くないということは考えにくいと粒沢は思っている。

実際にいくつかウィルス量と感染力との相関を見出した論文も出ているようである。

だが、上記の計測精度の問題もあり、実際に測定されたウィルス量が感染力と相関するかは必ずしも自明ではない。
社会状況などにも左右され、ケースバイケースになると予想している。

 

そして、やはり気になるのは検査を繰り返し行なってわざわざウィルス量の多い人を見つけるという戦略は実際に有効なのかどうか、という問題だ。

 

PCR検査でウィルス数が多かった人に警戒するというのは一見合理的だ。

 

だが、「陽性だったがウィルス数は少なかった」と言う人には自粛や警戒は必要ないのであろうか?

おそらくそう言われて納得する人はほぼいないと思われる。

よほど、ウィルス数がいくつ以下なら安全というデータでも示されているのであれば別だが。

 

それに、唾液検査である時点で陰性だったとしても、その後陽性に変わる可能性があるのと同じように、ある時点で少ないウィルス数だったからといって翌日や数日後にウィルスの数が増大しない保証は全くない。

研究として相関を見るのはいいが、実際の感染対策にウィルスの数をもちいると言うのはなかなか筋が悪そうに思われる。

 

ただしこれは論文中でも議論されていることだが、現状の検査方法の問題点は検査に時間と手間がかかるため検査頻度を上げるのが難しいことと、検査結果が返ってくるまでの時間が必ずしも早くないということがある。

もし、非常に安価で手間のかからない、すぐに結果の出る検査が開発されたとしたら、数時間おきに検査をして、ウィルス数に応じてすぐに隔離・入院or様子見、のように取り扱いを変えるという可能性はなくはない気はする。

 

まあそれは将来の話で。

現状の検査などのレベルでは、わざわざ陽性者の中でウィルス数によって取り扱いを変えるメリットは、実はそんなに多くない気がするなあ、と思うのでした。

新型コロナに感染した人の中に、ごく少数の非常にウィルス量が多い人がいて、しかもその割合は症状がある人も無症状の人も変わらないと言う話らしい。

 

Just 2% of SARS-CoV-2positive individuals carry 90% of the virus circulating in communities

Yang et al (2021) PNAS

https://doi.org/10.1073/pnas.2104547118

 

アメリカのコロラド州の大学で、昨年秋に新型コロナが流行したときに、大学生などから集めた唾液検体を分析した。

この大学では大学の関係者(主に覚醒だと思われる)から毎週唾液検体を回収し、PCRで分析。

この際に検体を提出する人にアンケートを取り、症状のない人のデータだけを集計した。

少なくとも唾液を取った時点では、検体提出者は新型コロナ関連の症状を感じていなかったと言うことになる。

こうして集めた72,000程度の検体のうち、新型コロナ陽性と判定されたのは1400検体ほどであった。

無症状者から集めてこれは、けっこうすごい陽性率じゃないか?大流行していたのだなあと思う。

 

その結果を集計すると、一部の被験者では推定ウィルス量が非常に多いということが分かったという。

上位2%程度のごく一部の被験者の唾液量は、全員のウィルス量の合計の90%ほどであるということだ。

 
またこの結果を、症状があるということで病院に収容された人たちのデータ(同時期の別の研究)と比較すると、分布の様子はほとんど差がなかったのだということである。

無症状なんだからウィルス量が少ない、ということは言えないということのようだ。

そんだけウィルスが多いのにもかかわらず無症状というのは不思議な気がするが、そういうものらしい。


Yang2021-fig3
↑無症状者(上)と病院に収容された症状のある人(下)のウィルス量(リアルタイムPCRによる推定値)の分布。横軸が対数軸であることに注意。棒グラフはウィルス量の出現頻度、青・赤の線は累積の値。どちらも、上位2%の人のウィルス量は全体のウィルス量の90%ほどに相当するという。

しかも、「病院に収容された人」は恐らく高齢者が多いのに対して「無症状者の調査」は主に大学生に対して行われた。

そういう調査方法の違いによるサンプル集団の性質の違いがあるのにもかかわらず、同じような分布になったということは興味深い、と著者らは述べている。

ようするに、ウィルスを出しまくる人はめっちゃ出すし、感染してもほとんどウィルスを出してない人もいるということなのだ。 

 

この結果が正しければウィルスをたくさん体内で増やして放出してしまうスーパースプレッダーPCR検査で見つけているのかもしれない、と著者らは述べている。

繰り返しスクリーニング検査を行い無症状者でもウィルスの多い人を発見することで、効果的に感染拡大を抑制することができるかも、と結論づけている。

 

ただまあ、いろいろツッコミどころというか、この研究だけではなんともいえない部分が多くある。

たとえば、本当にPCR検査でウィルス数を議論できるの?とか、ウィルス数の多い人は本当にたくさん感染させるスーパースプラッダーなの?とかだ。

 

つづく

tatemono_izakaya
ちょいと用事があり、本日は都心の繁華街に出かけた。
久々
繁華街に出かけてわかったこととして、タピオカ屋の跡地にPCR検査所ができていると言うのは初めて実物を見ることができた

検査自体の精度や良し悪しは別としても、繁華街の雑居ビルの一角で検査していると言うのは、品質やサービス内容に不安を覚える人もいるのではないかな。

今日会った人にも話を聞いてみたが、医療機関でも何でもないところで検査することに警戒感を持つ人はけっこう多いみたいですね。

なお、見かけた検査所はぜんぜん人がおらず、かなり空いているようでした。

 

あと、帰り道に夜間に繁華街を通ってわかったことは、飲食店営業自粛要請の効果によって夜8時以降は飲食店の営業はほとんどなされていないようだ。

みんな、強制力がない自粛要請でも、かなりよく守っているようだ。

正直強制力のない自粛で、歓楽街の飲食店がここまでみんな守っているとは思っていなかった。

 

だが飲みに来ている自体はたくさん見受けられた

ほとんどの店舗が8に閉まると言うことでそれよりも早い時間に飲みが終わるように開始時刻を早めに設定して多くの人が飲みに来ているようだ。

自粛要請では、昼間に飲食店が営業するのを禁止してはいないからね。

 

こうした緩い規制のもとでは、自粛要請が感染拡大を抑制する効果がどれだけあったかというと、わりとよくわからないと思う

その辺りの調査はちゃんとなされるのかなあ。

このページのトップヘ