TaqManプローブを用いた一塩基多型の検出方法について調べた件の続き。(初回はこちら)
なぜたった一塩基の違いだけではっきりとした差が見られるのか?
それだけで「DNA配列がプローブと一致している」か、それとも「DNA配列がプローブの塩基配列と一箇所だけ異なる」かを見分けられるものなのか?
一塩基の違いくらいじゃ、プローブはじゅうぶんに結合できてしまうんじゃないか?というのが粒沢としては疑問だったわけです。
これについて、開発者たちの論文(Livak et al, (1999)。前回参照)で議論されていました。
開発者らも、一塩基の違いだけでは、普通はたしかに間違ってるほうのプローブの結合そのものはどうしても起きてしまうと述べています。
しかし、いくつかの理由で、これは一塩基多型の解析をする上ではほとんど問題にはならないのだそうで。
まず間違っている方のプローブは、仮に結合したとしても一塩基のちがいのせいで「若干浮いてる」ような、ゆるい結合状態にしかならないと考えられるそうです。
そういう状態では、Taq DNAポリメラーゼによるプローブの切断効率が悪くなるらしいんですね。
「間違っているプローブはくっつきにくい」だけでなく「切断もされにくい」ため、両方のプローブを同時に入れておけば、正解のプローブの切断反応のほうが速く進むということのようです。
また、この実験から出て来るデータのパターンは、実質4つしかありません。
人間のほとんどの遺伝子は2倍体なので二つずつありますから、一塩基多型の領域も2つずつあって、だいたい多型は可能性のある塩基が2通りしかないことがほとんどです。
なので、仮にある位置にAもしくはCのどちらかがある、という多型だとしたら、
①両方の遺伝子がA
②片方がAで片方がC
③両方の遺伝子がC
④それ以外(反応失敗など)
の4種類しか可能性がないというわけです。
実際には、たとえば①のような両方Aみたいな条件でも、Cの場合のDNAに結合する「間違った方のプローブ」も、多少は反応してしまうことがわかっているそうです。
↑正解がAのときにAのプローブとCのプローブを入れたときのシグナルの増え方。間違っているプローブからもシグナルが2割くらいは出てしまっている
ですが、「間違った方のプローブの切断」が多少起きてしまっても問題はありません。
なぜなら、「①の時に出て来るシグナルのパターン」や「③の時に出て来るシグナルのパターン」さえわかっていれば問題ないからです。
あらかじめ事前に経験的に「この場合はこういうパターンの結果が出て来る」というのを解析専用のプログラムに登録しておいて、それと比較を行うことで、①〜③のパターンのどれに相当するか、(あるいはどれとも合わないのか)を判定すれば、それで一塩基多型の判定が完了するということですね。
↑遺伝子型の判定の様子。三つの型もしくは反応失敗が上手く分かれている。縦軸と横軸は純粋なシグナル量ではなく、「遺伝子型その1らしさ」「遺伝子型その2らしさ」で表現されているのがミソ。
なるほどねー。
はい、というわけで、今日の(あるいは3日間の)まとめ。
TaqManプローブさん、一塩基見分けられないでしょとか疑ってすんませんした!