群馬大学医学部で、「医の倫理学」「医系の人間学」の講義を担当する服部健司教授という人がいて、授業にインプロを取り入れるなど革新的な取り組みをしているらしい。
その一方で、その授業で単位を取れず留年する学生が多すぎるなどの問題が指摘されており、週刊文春の記事になったらしい。
週刊文春「学生は「アカハラだ」と悲鳴 群馬大医学部3年生「3分の1が留年」の異常事態」
インプロというのは台本のない即興の演劇で、単に自由に演技するだけではなく共演者の芝居に合わせることを要求される。
自分がこうしたい、という独りよがりではいけないのだ。
医療においては、医者は病気に詳しいから、診察をすれば医学的にはこういう治療をすべき、などということはわかるだろう。
だが、たとえば患者の抱えている問題によっては必ずしも医者の治療方針に同意しないことも考えられる。
患者が何を求めているかを探り、相手に合わせるという姿勢を作り上げるのに、おそらくインプロは正しく使えば意味があるのだろう。
推測に過ぎないが、インプロを導入していると言うのはそのあたりの課題感だと思う。
医師の中には、医学的な”正解”をゴリ押しして、標準治療や医師の方針に従わない患者をばかにするような人もいるからね。
実際に、服部教授の授業を知る人の中には、「厳しいけれどいい授業」「倫理的に問題のある人が落とされている」と言う人もいる。
togetter「群馬大学・服部健司の授業の評判は意外によかった事が判明」
公序良俗@shirako_tempura@fcf8ARWDS7U9YfC @isha_T_T_ 実際その通りっすね‥
2022/10/23 17:07:03
人の気持ちがわかる医者になって欲しいっていう思いが先生は超強いんかなって思います‥
たしかに留年させすぎは良くないと思うんですけど、先生の授業スタイル自… https://t.co/t8zf1gCpT0
公序良俗@shirako_tempura@isha_T_T_ 国語が圧倒的にできない人orちょっと人間的にヤバい人が落ちてる印象です‥
2022/10/23 16:41:12
ただ、そうした授業で出来が悪かったからといって学生を留年させ医師になることを阻止していいのか、という点や、合格・不合格の基準が不明確な授業で判断していいのか、という点は問題かもしれない。
医療の受益者である我々一般国民としては、正直なところ、いくら優秀でも倫理観に欠ける学生に医師になってほしくはない。
しかし、学生からすれば、医師国家試験を通過できず医師になれないというのならともかく、倫理観に問題があるから医師になれない、ということになれば、「話が違う」ということにもなるだろうね。
試験勉強が得意な医者の卵たちであっても、インプロのように、学術的に決まった正解のない表現活動の場合は、戸惑ってしまうという部分も大いにありそうだ。
(まさにその「一意に決まる正解のなさ」こそが教育上大事なところだろうけどね)
しかし、医の倫理学のようなフワッとしたテーマの舐められやすい(失礼)授業で、「どんだけ舐め腐ってても単位は来る」と思わせてしまったら、もとからインプロが趣味みたいな連中を除けば、誰も真剣にインプロをやらなくなるだろう。
真剣にやる方がアホくさく見えてしまう。
医学部生はプライド高そうだから、「俺たちは常にテストで満点近くとってきた医学部生様だぞ!将来は人の命を救うんだぞ!倫理学の講義みたいな、正解の決まらない、くだらないお遊びで留年させるなんて恥を知れ!」みたいに思っている医学部生も多分少なくないんだろうね。
この辺のさじ加減は難しいところだろうと思う。
少なくとも、「頑張らなくてもあなたたちに単位はあげますから」なんてヘコヘコやった日には「学級崩壊」間違いなしになることは容易に想像できる。
アカハラだのパワハラだの言われようと、服部教授には矜持と使命のために譲れない一線があるのだろうなというのは、わかる気がします。
結局この問題は、医学業界において権威を持っている他の偉い医者たちが、どっちを支持するかというので決まってくるんでしょうね。
群馬大学医学部はそれなりに彼の授業内容を感じたから服部教授を教員として採用しているはずですから、教授の立場を援護するように発言してくれたりするのかな。
でも、「こんなに留年させてたら群馬大学が受験生から不人気になってしまう」とか日和りだす教授もいるかもしれん。
服部教授のやり方を支持するにせよ支持しないにせよ、群馬大学医学部の他の教授たちは、どういうふうに思っているのかとても興味があるな。