粒沢らぼ。

当ブログでは現役生命科学系の研究者が、気になった論文を紹介したり、考えていることを共有したりしています。可能な限り意識を”低く”がモットー。たまに経済ネタとかも。
書いてる人:粒沢ツナ彦。本業は某バイオベンチャーで研究者をやっています。本名ではないです。
博士号(生命科学系)。時々演劇の脚本家、コント作家、YouTube動画編集者。アンチ竹中エバンジェリスト、ニワカ竹中ヘイゾロジスト。
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タグ:博士号

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今朝、布団で目が覚めて脈絡なくふと思い出したことなんだけど。

昔からの知人でいまはイケてるITベンチャーの役員をやっている人にちょっと前に会ったら、「PhD取って大学で研究してたなんてうらやましい!けしからん!」というようなニュアンスのことを言われたことがある。

たしかに、その人自身は技術者じゃなくて営業系の仕事をやっていたと思う。


お金持ちみたいだし、(詳細は知らないけど)仕事で成功してるみたいだし、若くて美人の奥さんもいるらしくて、はたからみると自分なんかよりよっぽどうらやましい生活をしているようにみえるんだけどね。


まあ、単なるお世辞やコミュニケーションの潤滑油という部分はあっただろうけど、全く心にもないことを言っている感じでもなかったんだよな。(むしろ、その時の言い方にはかなり本気の感情がこもっていたとも感じた)


自分にはわからないが、イケてるITベンチャーの役員もいろいろと大変なことがあるのだろうか?

なさそうに見えちゃうけどね。


SNSで他人の人生を見すぎて嫉妬で苦しむみたいな話題があったけど。

カッコよくスマートにやってそうな人も、内心ではいろいろあるのかもな。


苦しいか超苦しいかの違いはあるだろうけど、少なくとも勝ち組だから楽しいだけって人は、ほとんどいないのかもしれないな。

地位がある人はその分プレッシャーや責任も重いだろうしね。


人の人生のことを考えるよりも、いま目の前の仕事を処理できるのはとりあえずは自分だけなので、ちゃんとやらなきゃなあと思った。


目の前の敵から逃げてても経験値溜まらんしレベルも上がらんしな。


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粒沢はね、ほんとはアカデミックな世界に本当は残りたかったけど、能力が足りなくて無理でした。
でも、いざアカデミックな社会での出世コースから外れることが確定しちゃうと、大学の先生の言うような「一人でも多くの博士号持ちを雇えるように教授ポストを増やさなきゃ」「官僚の天下りで教授ポストを奪われるのは許せない」みたいな話、死ぬほどどうでもいいなと思ってしまいます。
もう自分に関係ないしね。
人間とは勝手なもんですねえ。

ウクライナ侵攻はロシアに侵攻されたらめちゃくちゃになるとわかったのでウクライナの中の人はめちゃくちゃ頑張って抵抗してロシアを押し返したし、他の国々も無関係ではないので協力してるよね。
ひるがえって日本政府がやろうとしている大学改革にも、ロシアに抵抗するウクライナみたいに抵抗すべきだ、などという人がいます。
大学改革に賛否はあるのは当然だよね。
でも「アカデミックど真ん中ではないほとんどの人々」にとって、いま話題になっている10兆円ファンドとかって我が身を危うくするような大問題なのかな?
多分違うよね。
だからウクライナvsロシアのような「正義vs悪」みたいな構図を広めようとしてもどだい無理なんだよね。

そもそも、社会で役に立つ人材を育成しているはずなのに(いつもそう言ってますよね?)、「博士号取得者のポストを確保しなきゃ」という話になるのは、おかしいですよねえ。
大学のポストなんかなくたって、いくらでも引く手あまたで仕事が見つかるはずじゃないですか。

国家規模の基礎研究の大事さはもちろん科学者の端くれなので重々承知していますし、そのためのお金も増やして欲しいですけど。
博士号取得者の雇用のためにポストを作らなきゃというのは、事実上社会で役に立たない人材を育成しちゃっているということですよ。
そうとしかとりようがないもんね。
要するに、くだんのツイートだとただの既得権益の自白にしかなってないんですよ。

本当に大学の先生って政治下手っすよね。
賢いはずの人なんだから、もうちょっと頭使って発信してほしいんですが。
ただ、どんなに地頭が良い方でも、実務経験がおありでない人だと、これくらいが限界なのかもしれません。

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博士号取得者の年収を一千万にしろ
だの、どうのこうの、みたいな話題がツイッターで盛り上がっていいたらしい。


この件に関して自分の中の結論はほぼ出ておりまして


博士号を取ったからには、専門性を生かして、短期契約で高給を狙おうということしかないと思うんだなぁ。


博士号って、要するに全例がないことを成し遂げるためのスキルなので、すでにお金儲けの仕組みができあがっている会社ではそこまで必要ない。

人が新しいことを始めるのに短期で貢献をして、報酬をもらって次の現場に行くスタイル。


たとえば家を建てる大工さんの専門スキルは、家をこれから建てる人にしか意味がない。
すでに家を持っている人が、大工さんにお金を払い続けるというわけにはいかない。 

だから、大工さんは家を立てるという仕事のある人のところを点々としなければならない。

博士号もまあ、そんなもんだと思っている。


すでにできあがっている仕組みをうまく回すだけなら修士までで充分だということだと思うんだ。

わざわざ博士号持ちを雇う必要ない。


だから、一つのところで勤め上げるというスタイルでやっていくなら、まあ博士号はいらんということになる。
同じ会社で生涯働きます!という終身雇用とは、相性が悪いんだよね。
 

安定性に欠けるという見方もあるだろうけれど、勤めている会社が潰れたり事業部がなくなったりする可能性があることを考えると、これはこれで別の安定性がある。

いわゆるジョブ型雇用ってやつのほうが合っているんだろうなあ。

まあ、だから常に博士号人材は新しいことを取り入れる気持ちが大事なんですわな。
そう自分に言い聞かせてやっていくショゾン。 

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桜のきれいな年度末である。

いろんな人と別れたり出会ったりする季節ですね。

 

後輩の学生氏が博士号を取ったというので先日会う機会があったのだが、少ししたら海外の大学にポスドクをしにいく予定なのだという。

欧州かアメリカの二択で悩んでいるらしい。

博士課程までやっていたこととはまた別の分野のことを身につけに行くのだそうだ。

これからまだいくらでも未来があるという感じで、羨ましくはある。正直。

新天地でぜひご活躍してほしい。

 

海外暮らしが合うかどうかは人による

自分は学生時代に欧州に実験で数週間滞在した経験がある。

海外の大学の様子が見られたのは面白い経験だったけど、実験の方はまったく進まず、ネガティブな結果ばかりであった。

海外のその大学の先生がやっているという特別な技術を習得すれば、道が拓けると思ったのだけどね。

結果は、少なくとも自分の実験には使い物にならないということがわかっただけで終わった。

「わざわざヨーロッパまで来て、得られた成果はたったそれだけか…。」と帰りの空港の中で非常にいたたまれない気持ちになりながら苦いコーヒーを飲んだのを覚えている。

 

その後も、行きたいと希望すれば海外の大学に行けたかもしれないけれど、それほど強く行きたいとは思えなかった。

もしかしたらその学生時代の経験がトラウマというか、いやな思い出になっているかもしれない。

 

海外にいけばなんかすごい技術やノウハウや人脈があって、実験が成功して、論文も出せて、人生がいい感じになんとかなる、と思っていたのだけれど、全くそうはならなかった。

結局、自分の抱えている問題は、自分で解決するよりないし、実力で解決できる能力がなければ行ってもお金と時間の無駄になってしまうのだ。

 

…という印象が自分の中に醸成されてしまったのかもしれない。

 

もちろん、分野によっては海外のほうが圧倒的に進んでい流場合もあるし、海外に行くのがどう考えても最適解な場合もあると思う。

実際に留学や海外ポスドクをやって、数年でCellとかScienceに一流の論文を出して凱旋して、教授とかになる人も何人か知っているしね。

才能と運に恵まれている、神に愛された人はそういうことができるのだ。

 

後輩氏はそういう神に愛されし者の一人なのか、はたまたただの凡人なのかは現時点ではわからない。

しかも、最近はコロナやアジア人ヘイトとかの不安要素もある。

だが、行くとしたらチャンスは博士号取得直後の今しか事実上ないのも事実だ。

彼の性格からしても、どちらに転ぶにせよ挑戦してみない訳にはいかないだろう。
 

自分は何も実用的なアドバイスができなくて申し訳ないのだが、ご多幸を祈る

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親戚の集まりで聞いたのだけれど、親戚のうちの一人が勤めている会社を辞めて保育士に転職を検討しているのだという。

自分は面識はないが、その方は某都心に店舗を構える接客業に勤めている女性らしい。

せっかく苦労して総合職で就職した会社ではあるのだが、結婚して子供ができて、ライフスタイルと合わなくなってきているというのが大きな理由だそうだ。

 

特に大きな理由は、何せ接客業なので、土日に休みが取りづらいということだという。

一番お客が来るのが土日に偏ってしまうので、全く休めないわけではないのだとしてもやはり休日を取るというのはやりにくいらしい。

旦那の人は普通の土日休みだそうなのでそちらとも時間が合わず、このままだと家族で出かけることもままならないのだという。

 

ついつい土日が基本的に休みのいわゆる普通の仕事をしていると忘れがちになるけれど、確かに休みの時にレジャーで出かける先の人にも生活があるし家庭があるんだよね。

まあ、旦那さんも同じような業種であれば別だったかもしれないけれど、そうでないとなるとなかなか難しさがあるよね。

 

そういう事情もあって、保育士の資格を取って転職を検討しているらしい。

保育士は保育士で大変だというし、給料も前よりは下がってしまう可能性が高いらしい。

だけど、結婚して収入のある旦那がいるわけだし、その人にとっては給料の多い少ないよりももっと大事なことがあるということですね。

働き方が多様化しているというのはまあそういうことなのかもしれません。

 

結局、その場では年上の親戚の「やっぱり資格を持っている人が最強だよね!」というまとめがあって話が終わった。

確かに、いつの時代でも子供はいるわけだし、子供を一時的に預けて働きに出たいという需要も尽きることはないだろうから、保育士の資格は悪くないかもしれないね。

まあ、実際にはそう単純ではない気もするけれど、親戚同士の集まりの雑談だからそこは多めに見て欲しい。

 

その場では言わなかったけど、「俺も『博士号』とかいう『資格』持ってるだけどなあ?」とは内心思った。

まあ、たしかに特殊能力の部類なんだろうけど、需要が特殊すぎて食いっぱぐれが普通にありうるというね。

最先端の技術や知識というのは状況によって価値が変動するから、なかなか難しいですね。
 

まあ、世の中なかなかうまい話はないもんですが、がんばっていきまっしょい。

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