マウスを使った動物実験の結果は一部は期待通りだったが、一部はちょっと変なことになってしまった。
だが、ハムスターの細胞は、マウスとは違ってヒト並みに2型パラインフルエンザウイルスに感染し、ウイルスのタンパク質を効率よくつくるらしい。(その②参照)
そこで、Ohtsukaらの研究では、ハムスターを使った動物実験を改めて行った。
初めからハムスター使っておけば…という気もするが、なかなか未知のものを相手にする実際の研究ではそううまくいかないもんである。
ハムスターにワクチンを投与する実験では、ワクチンを1回接種してから9週間後or10週間後の血清を回収。
この血清(×30希釈)が、新型コロナのスパイクタンパク質の働きを抑えるかどうかを、偽コロナの実験で検証した。
その結果、ワクチン1回しか接種してないのにもかかわらず、スパイクタンパク質の働きは血清で95%くらい阻害された。
↑ハムスターで、ワクチン後の血清のスパイクタンパク質阻害実験。ワクチンなし(青)にくらべ、ワクチン1回目投与から10週(オレンジ)もしくは9週(緑)で高い阻害効果を示している。Ohtsuka et al (2021)より。
1回の接種でも強いスパイク抑制ということは、マウスのときよりもよく効いている。
これは、マウスとハムスターの細胞の、パラインフルエンザウイルス許容度の違いによるものと考えられている。
そうであるなら、ハムスターのときの結果がよりヒトに適用した場合の結果に近いだろう。
さらに、ハムスターの鼻の奥の粘膜がウイルスを防ぐかどうかを調べるため、次の実験が行われた。
まずハムスターの鼻から生きた新型コロナのウイルスを投与する。
そして三日後に鼻の奥の液を集めてきて、感染力を保持しているウイルスの存在量を分析した。
すると、ワクチン1回のグループでは、接種なしグループよりも、鼻の奥にいるウイルスが1/10 ~ 1/100程度になっていた。
また、ワクチン2回のグループでは、ウイルスの存在量が1億分の1程度にまで減っており、ほぼ検出されなかった。
↑ハムスターで、感染処理後3日後の、鼻の奥の新型コロナウイルス検出数。ワクチンなし(青)、ワクチン1回目投与から11週(オレンジ)もしくは2回目投与から2週(緑)。特に2回目投与後は、鼻の奥でウイルスがほとんど生存しないらしい。Ohtsuka et al (2021)より。
つまり、新型コロナの鼻の奥でのウイルス増殖が、IgAの効果で抑えられたり不活性化されたりしている可能性が高い。
ハムスターの場合は、パラインフルエンザワクチンの鼻スプレーで、ちゃんと予防効果もあると考えてよさそうだ。
ヒトに適用したときにどうなるかだが、願わくば、ハムスターの場合の同等の良好な結果になってほしいものだね。
実用化に向けては、もちろんヒトにおける治験が欠かせない。
日本国内では最近感染者が少ないので、十分な治験が行えない可能性がありそうだ。
ドイツあたりで試させてくれないかな。
EUは日本産の製品の治験に非協力的なイメージあるから厳しいかもしれません。
金銭面だけでなく、他国との便宜を調整する意味でも、詳しい人や人脈ある人の協力がほしいとこですね。
頑張ってほしいし、いろんな人が協力して治験させてあげてほしいな。