粒沢らぼ。

当ブログでは現役生命科学系の研究者が、気になった論文を紹介したり、考えていることを共有したりしています。可能な限り意識を”低く”がモットー。たまに経済ネタとかも。
書いてる人:粒沢ツナ彦。本業は某バイオベンチャーで研究者をやっています。本名ではないです。
博士号(生命科学系)。時々演劇の脚本家、コント作家、YouTube動画編集者。アンチ竹中エバンジェリスト、ニワカ竹中ヘイゾロジスト。
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カテゴリ:科学 > 生物学小ネタ

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別に文句はないんだけど、どういう仕組みになっているのかよくわかんないことがある。

培養肉のスタートアップとかな。


ああいうよくわからんものに、世の中の投資家の人たちはよく投資できるよな。

あれはどういう仕組みで納得してお金が流れてるんだろう。

出口あんのかなぁ…。


確かに、肉食が全て(とはいわないまでも大部分が)培養肉で賄えるようになったら、世界が一変してすごいことになる気はする。

動物愛護の倫理が盛り上がる世界だし、工業製品として安くうまい肉を作れるようになったら、そちらが主流になるのかもしれない。


だから研究としてはいいんだけど、近い将来に採算が合う気がしないけどなあ。

多少高くても、熱心な動物愛護主義者とか高級料理愛好家が買うようになるからいいのだろうか。


それとも、動物を殺さなくてもよくなる研究に出資している事自体がある種のステータスだからいいということなんだろうか。


ニュースイッチ「【ディープテックを追え】未来の食肉「培養肉」、スタートアップが技術確立目指す」


上記記事によれば、培養肉企業のひとつであるインテグリカルチャーでは、食品メーカーとプラント建設企業が出資しているらしい。

外から成長因子を加えなくても培養でき、安価で食品としての安全性を示しやすいのだという。

食品メーカーや化学プラント建設の専門企業が知識を結集!!とかいわれると、それなりに安価な培養肉を量産する方法の目処くらいは立つのかもしれないなあ、という気はしてくる。(納得というより信用的な意味で、だけと。)



記事中では、インテグリカルチャーの製品としてはペースト状のもの(培養した細胞)を固めたものが主流となると述べている。

本物の肉を再現することは、直近では難しいのだとか。

確かに、そこ妥協していいなら、とりあえず売れるものを作る、という意味では一応可能なのかねえ。

まだまだこれからという感じっすな。


培養肉は未来の巨大市場っていうけど、ホントなのかねえ。

将来的に普通の畜産がうまくいかなくなるシナリオとか考えてるのかなぁ。

そんなことあるかなあ。あったとして培養肉がそれを解決できるのかなあ。

まあただ、培養肉は最終形が比較的イメージしやすいだろうから、非技術者で投資家のおえらいさんを説得するのは、やりやすい部類なのかもしれないなー。

既存の大企業の技術的なバックアップもあるとなれば、安心感はあるかもね。


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北海道や岡山の養鶏場で鳥インフルエンザが発生したらしい。


考えてもしょうがないけど、鳥インフルエンザっていったいどっから来るんだろうね。

野鳥とかがウイルスを保有したまま国を渡ることで、国外から持ち込んでんのかな。

普通に国内の野鳥がウイルスを保有しているのだとすると、もっとずっと発生頻度高いはずな気もするが…。


聞いた話だと、最近は鶏の買い方も鳥インフルエンザにならないように、野鳥と接触しないようにたとえば外で飼うにしてもネットを設けるとか、工夫するように家畜保健衛生所とかから指導されたりするらしい。

そのおかげか、鳥インフルエンザになる養鶏場はそこまで多くないけれど、やっぱり出るときは出るという。


窓無しのいわゆるウィンドレス鶏舎を採用しても、やっぱり出るときは鳥インフルエンザは出るらしい。

窓無しといっても、外気を換気のために取り込んだりはしているだろうから、完全に隔離されてるわけじゃないけど。

少なくとも、外の野生の鶏や動物と直接の接触が発生することはない。

それでも、鳥インフルエンザは出るときは出るというから、結構不思議よね。


野鳥が鶏舎の周辺に糞をして、それが乾燥して風に乗って吹き込んだり、人や猫などの小動物の体に付着して運び込まれたりする、というのがいまのことろ信じられている仮説のようである。


YUIME Japan 「鳥インフルエンザの基本的な対策と注意点を教えてください」


本当なのかどうか誰か検証してほしいけれど…。

日本全体で(家畜ニワトリに最初に感染する)年に数回起きるかどうかのイベントが、真の意味で科学的に検証・解明される可能性はほぼ皆無だろうなあ。


農家も、基本的には気をつけてはいるだろうけど、感染症を完全に防ぐのは難しいね。

粒沢も、コロナ禍直後でほとんど外出してない時ですら、コロナにはかかりませんでしたけど風邪は引きましたからね。


まあ、稀にどうしても発生してしまう鳥インフルエンザ程度なら、発生次第移動禁止と殺処分が行われ、農家にも国から補償が出るらしいので、殺処分は大変だとはいえ、いまのところほとんどの農家にとってはそれ以上の脅威にはなっていないんだそうである。

人間の感染症と違って、感染した動物を片っ端から処分すればいいわけだから、事実上の「ゼロ鳥インフルエンザ」を達成することはそれほど難しくないということですねえ。


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フェムテックトーキョーというイベントで、女性をエンパワメントするテクノロジーを紹介するはずなのに、膣ケアばっかりじゃないか!とツッコミが入っていた。

(全体としては有意義だったとフォローは入っているけどね)


なんでそこまでして膣をケアする必要があるんだよ、と思いがちだけど、膣ケア自体は多分やった方がいいのだ。


女性の場合、歳をとるとともに膣や肛門を引き締める筋肉(骨盤底筋)が衰えやすく、その結果尿もれ(腹圧性尿失禁)を起こしやすいことが知られている。

尿もれというと大したことないようだけれど、毎日のように尿もれに伴う悪臭や不快感を感じることは、想像以上に生活の満足感を低下させると言われているのです。


健康長寿ネット「尿もれ予防」


ちなみに男も尿もれ防止のためには膣ケア…じゃなかった、骨盤底筋トレーニングをしたほうがいいらしい。

男性むけのトレーニング器具なども売っているようです。


ただし、女性と比べると、男性は体の構造的に骨盤底筋が弱まりにくいのだとか。

粒沢の勝手な予想では、男性は日常的にチンチンをアレしているので自然と骨盤底筋が鍛えられているのではないかと思ったのですが、そういうことではないようです。


とにかく、骨盤底筋トレーニング自体は可能ならばやったほうがいいとは思うのです。

棒状のものを膣に入れるのも、少なからず骨盤底筋の筋トレ効果はあるということになると思いますので、健康のためにも定期的に棒状のものを膣内に入れるべきだと思います。


それにしても上のツイートで出ている膣ケアの棒(商品名yoniCAREですけども、LEDのついた棒で光を膣の中に当てることで健康効果が得られるそうなんですけど。

なぜ光を当てると健康に良いのかはよくわかりません。

根拠はよくわかりませんが性器を日光浴すると健康になると主張する集団もいるらしいですし、それと同じような効果があるのかもしれません。


VICE「なぜTikTokでアナル日光浴が流行っているのか」


それは別にいいんですが、公式サイトによるとyoniCAREは「LEDライトで腟内に直接アプローチ」と謳いながら、「ゆるみや性交痛、尿漏れなどの老化現象の改善が期待できる家庭用腟レーザーです」と主張しているので、「いや、(多分)レーザーじゃないだろお前は」と思ってしまいます。

多分だけどコヒーレント光とか出してないと思います。形状的に。


ROHM「レーザーダイオードとLEDの違い」


LEDでありながらレーザーを自称しているのだとするとしなければならない必要性がよくわかりませんが、「レーザー脱毛とかあるし、レーザーを当ててると思ってもらったほうが健康に良いと思ってもらえそう」という宣伝戦略上の判断なんでしょうかね。


光る意味はよくわかりませんが、ネット上のAIに光る男性器を描かせるブームが示すように、魔羅を模した構造のものが光るのは大変素晴らしいことなのでどんどん光らせると良いと思います。


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オキシトシンといえば愛情や安心を感じたときに分泌されるホルモンで、血中や唾液中の濃度がたとえば親が赤ちゃんと触れ合ったときなどに増加することが知られている。

その効果から愛情ホルモンなどと呼ばれたりもする。


医療法人社団福寿会「オキシトシン」


不安やストレスがなくなる、睡眠の向上、学習意欲の向上などさまざまな健康効果があり、上記引用元にあるように、絶対に分泌されたいホルモンである。(絶対に分泌されたいってなんだよ…)


しかし、分泌するための方法を見るとわかる通り、「家族や子供とスキンシップ」「人に頭を撫でられる」「ペットと触れ合う」など、独身中年男性には難しい項目が多い


確かに、普段異性との接点がない男性(俺です)がたまに異性と(釣り錢の受け渡しとかで)触れ合うと、ものすごく脳内でナニカ出てる感じがするけど、あれがオキシトシンなのか。セロトニンなのかもしれないが。

しかし、独身中年男性が得られるまともなスキンシップの機会なんて、いかがわしいお店に行ったときくらいなものであろう。


やはり独身中年男性がオキシトシンを出すには、お金を払っていかがわしいお店のサービスを受けに行かないといけないのか。 


いや、よく見ると「恋愛ドラマや小説にふれる」という項目があるじゃかいですか。

きっと恋愛系のアニメ見てもオキシトシンが出て満たされるはず!


と思ったんだけど、以下の記事に出てくる根来医師によると、


「ゲームや映画のような二次元の世界で疑似恋愛に励んでもオキシトシンはあまり出ません。人間対人間というリアルな社会的交わりの中でこそ、オキシトシンは発揮されるのです。」


とのこと。


OurAge「愛情ホルモンの出し方教えます!/Dr.根来の体内向上プロジェクト」


ショック!なんかそういうデータあんのかコラ!論文あんなら出してみろコラ!

でもまあそうですよね。知ってた。実感として。


やっぱりいかがわしい店に…


でも、根来先生によると、オキシトシンは親切心や素直な気持ちを表したりすることでも増えます。とのこと。

周りの人と仲良くコミュニケーションすることでもオキシトシン出るらしい。

うそつけ!絶対にそれはウソだろ!周り全員おっさんの場合とか考慮してないだろ!

被験者を友達のいないオタクに限定して計測をやり直すベキだ!


やっぱり独身中年男性は、オキシトシン出してくためにはいかがわしい店に行くしかないのだ!

(それ言いたいだけだろ)

 



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食中毒防止の文脈では、「ギラン・バレー症候群の人を絶対に出してはいけない」、という前提で話が進むことが多い。(前回1/2はこちら
「たくさんの食品を作って提供しているのだから、100万人に1人くらいは食中毒でギラン・バレー症候群になる人もいるでしょ」、なんて言っている食品業者や飲食店はいないのだ。 (仮にいても排除されるよね)


一方で、ワクチン接種の文脈では、ギラン・バレー症候群は「出るときもあるけど、統計的有意差はないからワクチンのせいではない」と言われることが多い。

沢山の人にワクチンを接種していれば、確率的には数十人くらい出てもおかしくないでしょ、みたいな扱われ方だ。

それに、普通に感染する方がギランバレー症候群になるリスク高いからワクチンによるギランバレー症候群は無視していいんだそうです。


でも、その理屈もどうなんですかね。


ワクチン接種後にギラン・バレー症候群が出ても、接種奨励した方は「まあ、出るよね」で済ませられるというのは、果たしてフェアといえるのかね。


仮に因果関係が証明できないとしても、たまたまギラン・バレー症候群になったのがワクチン接種の数週間後だったら、めちゃめちゃ最悪ですけどね。

体が動かなくなった本人からしたら、もし、あのときワクチン打たなければこうはならなかったかも…という気持ちが一生ぬぐえないと思うんだよね。


ワクチンを打ちさえしなければ、そもそも感染せずに何も起きなかった可能性や、感染しても普通に治ってた可能性だってあるんだからね。

とりわけ、インフルエンザとか新型コロナみたいな、健常者にとってはほとんど重大な結果にならない病気のワクチンの場合は、そうなる可能性が普通にあるよね。


これがワクチンじゃなくて金融商品だったら、儲かる可能性が高いからと投資商品を勧められて、言う通りにして、たまたま悪い方の目が出てしまって損しても、誰も責任取ってはくれないんですよ。

保険や投資商品の勧誘ではありえないような、メリットだけを強調するアンフェアな説明が、ワクチンの分野では横行しすぎだと感じます。

メリットを説明するのはいいけれど、どうせ推奨したほうも万が一なんかあったときの責任なんて取れないのだから、最終的な打つ打たないの判断は個人に委ねてほしいですね。


せめて、自分が効果に納得しているワクチンだけを打ちたいです。


ちなみに、「統計的に有意差がないとかじゃなくて、絶対に原理的にギラン・バレー症候群にならないワクチンはないのかよ!」と思うところなんだけれど、ギラン・バレー症候群は発症する条件や防ぐ方法が不明なので、ワクチンを接種する以上はごく稀に発生するのはどうしようもないみたいである。



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