新しい技術を開発して、うまくいったらそれを売却したり特許料で収益を得るというベンチャー企業が世の中にはある。
活動資金は、だいたいお金をたくさん持っている出資者から資金を集め、開発が成功したら出資者に還元するという仕組みだ。
たぶん、粒沢の所属している会社もそうした企業の一つ、ということになるのだと思う。
そうした研究開発型の技術系ベンチャーに詳しい偉い人の言っていたところによると。
ベンチャーが多くの資金を集めるために必要なのが、研究開発の道筋だけでなく、経営上の様々なリスクや不確定要素を織り込んで、事前にまとめておくことなんだそうだ。
例えば、無事開発が進行した場合や、何か問題が顕在化して途中で開発を断念した場合、あるいは途中で資金集めが難航した場合など、いくつかのシナリオを事前に想定しておく。
それぞれのシナリオで、もっとも損失を小さくし利益を大きくするのはどういうやり方かを事前に考えておく必要があるのだという。
開発が無事終了するにせよ、何か問題が起きて途中終了するにせよ、「そこまでの成果がいくらで売れるかなんてわかんなくないか?どうやってそんな将来のことまで計画立てるんだ?」という気もするのだが。
そこは、これまでに国内や海外でどういう事例があったのかを事例収集することで、ある程度予測がつくのだという。
新しい技術を開発したベンチャーが、最終的にどれくらいの価値の企業に成長しているか。
あるいは、開発を途中で断念した場合も、他社に買収されるとかそこまでの知財を売却するとかで、少なくともいくらくらいは回収できるか、とか。
そういうのは、特にアメリカなどをウォッチしていると、類似の事例はけっこうあるものらしい。
そうした事例の知識をたくさん持っておくことで、説得力のあるプレゼンテーションができるようになるんだという。
過去の技術系ベンチャーの状況と比較して、「自分たちの技術の場合は、どの程度の価値がつきそうなのか」というのを意識しておくのが大事ってことらしい。
プレゼンテーションが良ければ、それだけ資金集めもうまくいきやすいからがんばってね、というようなことを言っていた。
この辺の調査は、結局粒沢ではなく別の同僚が担当することになったけれど、まあなかなか大変そうだ。
「来年のことを言うと鬼が笑う」じゃないけど、将来の予測を立てるのは基本的に難しい。
だけれど、その中でも説得力を出す方法というのは、どんな分野でもあるものなんだねえ。
偉い人の話はやはり参考になるな。
うん。ということで、同僚氏には事例調査頑張っていただきたいなと内心でエールを送っておく。