昨日まで、5型パラインフルエンザウイルス(PIV5)を利用した、鼻から投与できるワクチンを紹介してみた。
こちらのウイルス改変体を用いたワクチンでは、ウイルス自体の増殖能力があるため、投与された人の体内でワクチンのウイルスが増殖してしまっていた。(前回参照)
これでは、安全性に疑問を持つ人もいるだろう。

一方、先日友人の某氏に教えてもらったとおり、三重大学出身のバイオコモというベンチャーでは、
2型パラインフルエンザウイルス(hPIV2)を改変したワクチンを開発している。

 

バイオコモのhPIV2を改変して利用するワクチン(BC-hPIV2)では、「ワクチンのウイルスに自己増殖能力がない」というところがポイントであるようだ。

これなら、ワクチン接種を希望しない人にまでワクチンが広がる可能性はほとんどない。

希望しない人にまでワクチンが広がるというのは、受け入れられないと思う人もきっと多いはずだ。
安心感を持たせる上でもこの配慮は非常に重要だろう。

 

Vero/BC-F: an efficient packaging cell line stably expressing F protein to generate single round-infectious human parainfluenza virus type 2 vector

Ohtsuka et al (2014) Gene Therapy

https://doi.org/10.1038/gt.2014.55

 

ワクチン用の改変パラインフルエンザウイルス(BC-hPIV2)では、ウイルスの増殖に必要なFというタンパク質をまるまる欠損させている

 
OhtsukaFig3a 

↑通常のPIV2のゲノム(上段)と、BC-hPIV2のゲノム(下段)。BC-hPIV2ではFタンパク質が欠損している。(今回の説明に不要な記号は、当方で消去しました)

 

Fタンパク質は、Fusion(融合)の頭文字が名前の由来であり、ウイルスの膜と感染相手の細胞の膜を融合させる機能がある。

この膜融合により、ウイルスの中身が細胞に入り込むことができるのだ。

だが、BC-hPIV2は、Fタンパク質を持たないため、感染を起こすことができない。

増殖することもできなければ、細胞にタンパク質を作らせることもできない。

もともと毒性は低いが、Fタンパク質の欠損により非常に無力で安全になったといえる。

 

だが、いくら安全でも増殖能を持たないのならばどうやってそのウイルスを増やしたりワクチンを製造したりするのか?という問題に突き当たる。

 

これを解決するのが、ウイルスのFタンパク質を作る特別な動物細胞Vero/BC-Fなのだ。

 

つづく