バイオコモのワクチンの話をしようと思ったけど、その前に前回の補足のコーナーやっちゃうか。

 

まず、5型パラインフルエンザウイルス(PIV5)を利用したワクチンはこの場合鼻の粘膜の細胞で無症状で増幅できるわけだけど、PIV5はいつまでも接種した人に感染したままで放出され続けるのか?と言う点。

 

結論から言うと、フェレットの動物実験で、鼻にワクチン液を入れて数日後に鼻の中のPIV5のウイルス数は多くなるけど、2週間後にはほとんどゼロになっていたという。

 

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フェレットにPIV5のコロナワクチンCVXGA1を投与した後の日数と、ウイルスの数。一つの線がフェレット1個体。

 

理論上は、この形式のPIVワクチン自体は無限に増殖する可能性もあるけれど、実際には動物側の免疫で数日で排除されるので、半永久的にSタンパク質を作り続けるわけではないみたい。

 

しかし、ウイルス自体が増えるということは、PIVワクチンを投与された直後の人の鼻水でも極論は効果あるわけで、無限増殖できるのかな。それもどうなんだ。

まあ、製薬企業にとっては儲けが出なくなってしまうからマイナスだけど、発展途上国の防疫には逆にいいかもな。

 

あと、昨日出したフェレット同士の感染のデータでは、PIVワクチン投与フェレットと同居していた非免疫のフェレットでも、時間が経つと感染が起きてしまっていた。


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↑昨日出した、フェレット間のSARS-CoV-2の感染実験。CVXGA1投与群でも、感染がおきている?
 

これは、フェレットの飼育環境に原因があると筆者らは考えているらしい。

新型コロナのSARS-CoV-2を使用するという実験の都合上、レベル3のウイルス管理実験施設を使わないといけなかったが、そんなにたくさんの部屋を使えるわけではないので、ワクチン感染あり・なしのすべてのフェレットのケージを同じ部屋に置いて飼育していたという。

また、動物愛護の観点から、すべての飼育ケージは一週間に一回は交換しなければならないルールがあるのだという。

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↑フェレットの個体間感染実験時の様子。ケージごとにワクチン条件が違うけど、密閉されているわけではない。
 

こうした事情から、「ワクチン接種グループのフェレット個体が全然ウイルスを放出していなかったにもかかわらず、それと同居の非免疫フェレットに感染が見られた」という現象は、別のケージからウイルスを含む飛沫が飛んできたか、ケージ交換作業の際に物を介して感染してしまったために起きたと考えられるそうだ。

なかなかこの手の動物実験はいろいろ制限がある中でやらないといけないから苦労するよね。大変すな。 

まあそういうことで、この論文はこの辺にしておきます。